痛みを伴う皮膚疾患

痛みを伴う皮膚疾患がある場合は早めに皮膚科を受診しましょう。
痛みの現れる皮膚疾患としては、帯状疱疹や毛包炎、粉瘤、蜂窩織炎などがあります。
主な疾患
帯状疱疹
ピリピリ刺すような痛みを伴う赤い斑点、水ぶくれが帯状にあらわれる病気で、日本では、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になるといわれています。
帯状疱疹は皮疹や痛みを生じ、治癒した後も痛みなどが3ヶ月以上持続する(帯状疱疹後神経痛)ことがあります。
約10%が帯状疱疹後神経痛に移行しますが、50歳以上では約20%が帯状疱疹後神経痛に移行すると報告されています。
また、重症の皮疹がある方や、急性期の強い痛みがある方も、移行しやすいといわれています。
帯状疱疹後神経痛の痛みはときに極めて激烈で管理が難しく、患者様の負担は大きいものとなっています。
また、まれに運動神経麻痺が生じて患部に力がはいりづらくなったり、痺れが残ったりすることがあります。
顔の帯状疱疹では、角膜炎や結膜炎、まれに耳鳴りや難聴、顔面神経麻痺が生じることがあります。
帯状疱疹の治療
帯状疱疹は、発疹が出てから少なくとも3日以内に治療を開始することが重要です。
早く治療を始めれば、傷痕や帯状疱疹後神経痛への移行も少なくなりますし、合併症も起こりにくくなります。
ただし、発症しても気づかない人が少なくありません。
典型的な発疹や水疱がなく、判別が困難なこともあります。
当院では、帯状疱疹かどうかが10分でわかる検査にも対応しており、以前なら帯状疱疹と見分けがつきにくかった症状も簡単に診断できるようになりました。
重症化すると、発熱や頭痛、吐き気、髄膜炎を発症することがありますので、チクチクした痛みや発疹の症状があったらすぐに受診してください。
帯状疱疹の治療の中心は、ウイルスの増殖を抑える抗ヘルペスウイルス薬です。
それに加えて痛みを抑える鎮痛薬を内服し、炎症を和らげる軟膏を塗ることで治療していきます。
従来の抗ウイルス薬は腎臓で代謝されるため、腎臓の機能に影響を与えることがありましたが、2017年に腎臓に負担のかからないタイプの抗ヘルペスウイルス薬が登場し、腎臓に不安を抱える高齢者でも安心して服用できるようになりました。
また、重症例や入院が必要だと判断した場合は、速やかに連携の高度医療施設へご紹介します。
帯状疱疹のワクチン
50歳以上の方や、基礎疾患などリスクのある方は、帯状疱疹ワクチンを接種することができます。
帯状疱疹発症のリスクを下げ、たとえかかったとしても症状が軽くすみ、帯状疱疹後神経痛のリスクが下がります。
単純ヘルペス(口唇ヘルペス・性器ヘルペスなど)
ヘルペスウイルスには幾つかのタイプがありますが、このうち単純ヘルペスウイルス1型、または2型による感染症の総称です。
1型の場合は口唇ヘルペスとなることが多く、2型の場合は性器ヘルペスになることが多いです。
いずれの場合でも、感染部位の皮膚や粘膜に水疱やびらんを引き起こすようになります。
なお、単純ヘルペスウイルスに一度感染すると、治療によって完全に排除されることはなく、神経節と呼ばれる部分に生涯にわたり潜伏し続けます。
そのため、風邪などによる発熱や疲労、寝不足、ストレス、外傷、強い日焼け、月経など、免疫が低下する要因によってウイルスが再活性化すると、再び皮膚症状が起こります。
当院では、水疱やびらんをこすって調べると、単純ヘルペスウイルスに感染しているかどうかが10分でわかる検査にも対応しています。
単純ヘルペスの治療
単純ヘルペスの治療法は、大きくわけて3つあります。
① 水ぶくれができた後の治療法
抗ヘルペスウイルス薬内服(原則5日間)や、外用があります。できるだけ早く使い始めることが大切です。
② PIT(patient initiated therapy)
水ぶくれができる前の初期症状(ピリピリ・チクチクなど)を感じたときに開始する治療法です。
治療の流れ
- 症状が出る前に受診してあらかじめお薬を処方
- 初期症状を感じる
- 6時間以内に服用
- 受診して、次の再発に備えてお薬を処方
単純ヘルペスは繰り返し再発するため、あらかじめ薬を処方しておき、初期症状(ピリピリ・チクチクするような違和感)が出たときに、患者様ご自身の判断で発症6時間以内に抗ヘルペスウイルス薬を服用します。
PITは、神経でウイルスが増殖し始めたところですぐに内服をすることで、ウイルスが増えすぎる前に増殖を抑えられるため、症状が治まるまでの期間を短くすることができます。
症状が出始めたときにすぐに医療機関を受診できない方や、あらかじめお薬を準備しておきたい方などはご相談下さい。
③ 再発抑制療法
発症を抑制する治療法です。
- 性器ヘルペスが対象です。原則、毎日抗ヘルペスウイルス薬を内服します。
蜂窩織炎
主に黄色ブドウ球菌やレンサ球菌が原因となり、皮膚の深い部分から皮下脂肪組織にかけて起こる化膿性の炎症です。
毛穴や汗管、小さい傷、あるいは骨髄炎など深い感染部位から菌が皮下脂肪組織に侵入して発症します。
とくに、傷口の処置をきちんとできていなかったり、ステロイドなど免疫抑制剤を服用している方、免疫力が低下して感染症にかかりやすい糖尿病などの方によくみられます。
感染すると、皮膚が赤く腫れあがり、熱感や痛みが出現します。
顔や四肢によくあらわれ、発熱や倦怠感などの全身症状を伴うことも少なくありません。
基本的には抗菌薬の内服や点滴で治療を行います。
また、致死率が3割に上るともいわれる危険な感染症が「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」いわゆる「劇症型溶連菌」です。
重症化すると、手足の壊死や多臓器不全を引き起こしショック症状から死に至ることもあり“人食いバクテリア”とも呼ばれています。
蜂窩織炎は重症化して入院が必要になることもあるため、できるだけ速やかに受診してください。
特に、糖尿病や膠原病、癌、免疫抑制剤内服中など基礎疾患のある方、高齢者の方、妊婦の方は注意が必要です。
足の赤みや腫れは、蜂窩織炎だけではなく、うっ滞性皮膚炎や結節性紅斑など、その他疾患との鑑別も必要です。
溶連菌を見逃さないためにも当日に溶連菌の存在の有無を判別する検査も行っています。
ひょう疽
細菌などが手足の爪周辺にある小さな傷から入り込むと、感染部位が炎症を起こしてしまうことがあります。
このような疾患を「ひょう疽」と呼んでいます。
指に刺さった小さなトゲやちょっとした傷口から細菌が侵入することもありますが、どこから菌が侵入したのかはっきりしないケースも少なくありません。
初期段階では皮膚が少し赤くなっている程度であっても、放置していると炎症が広がり膿が溜まったり、指先の関節が腫れて曲がらなくなることもあります。
抗菌薬の外用や内服により治療しますが、膿貯留がある場合は皮膚の一部を切開し、膿を出すことが必要になることもしばしばです。
炎症性粉瘤
皮膚の皮が毛穴の奥で袋を作ってしまい、中に老廃物や皮脂が溜まった半球状の腫瘍のことを「粉瘤」と呼んでいます。
粉瘤のなかには、患部に炎症や化膿が起こってしまうことがよくあります。
この場合は、「炎症性粉瘤」となります。
腫瘍の中央部には黒点状の開口部があり、強く圧迫すると開口部から臭くてドロドロした内容物が排泄されます。
よくできる部位は、耳のまわり、耳たぶ、鼠径部、背中などですが、毛穴がある場所なら、どこにできてもおかしくありません。
いずれにしても、炎症を抑える治療が必要になります。
抗生剤の外用、内服で対応するケースもありますが、基本的には膿が溜まっている部位に局所麻酔をして切開の上、膿を出します(切開排膿)。
切開排膿後は、炎症が落ち着くまで通院加療が必要です。
できるだけ粉瘤の袋を取り出しますが、炎症のない粉瘤と比べると再発率は高いです。
その場合は、後日改めて摘出手術を行う必要があります。